工芸都市高岡2025クラフトコンペティション

今回より隔年開催となった「工芸都市高岡クラフトコンペティション」。“時代とともに変わる、クラフトの未来をともに創る。進化する工芸都市高岡クラフトコンペ、新しい挑戦へ。”をキャッチフレーズに作品募集を行ったところ、従来のおよそ2倍の作品が寄せられました。その数、448種・1371点(前回(2年前)の応募数は222種・665点)。全国のクラフトマンの注目の高さがうかがえます。

同コンペティションは、本年度から審査員を一新し、また入選作品の事業化に向けた取組みを行うなど、新たなステージへと進化します。その主役となるグランプリ作品、アワード作品などが選定された様子をお知らせします。

審査員長
能作 克治/㈱能作
審査員
秋山 功一/㈱松屋 銀座本店
辻 和美/factory zoomer
永山 祐子/㈲永山祐子建築設計
三田村 有純/東京藝術大学 名誉教授

原点に返る

一次審査は、作品情報や作品の画像をもとに5名の審査員が入選作品を8月初旬までに選定しました。入選数は120種・529点。これらを高岡クラフト展の会場(御旅屋セリオ)に展示し、現物作品を前にして2次審査が行われました。

従来の2次審査は、審査員各自が色違いのフセンを持ち、推しの作品に付着する方式を採用(審査員1人10点まで)。得票数の多い作品を中心に審査員が意見交換し、受賞作を決めていました。しかしこの方法では「フセン付着時に、他の審査員の意見に引っ張られる懸念がある」(三田村審査員)とご意見をいただいたことから、今回の2次審査では、各審査員が手元の用紙に推薦する作品(10作品)を記入する方式に変更。集計時まで、“どの審査員が、どの作品に、票を投じたか”が不明で、公平に審査されました。

2次審査は9月29日(月)に行われましたが、三田村審査員は3日前の26日(金)に実施。10種の推薦作品、うち4種のアワード候補作品、1種のグランプリ候補作品を事務局に伝え、「他の審査員の意見と合わせて最終決定して欲しい」と能作審査委員長に後を託しました。


事務局:審査員が一堂に会するのは本日が初めてですので、自己紹介と審査にあたっての抱負、あるいは審査にあたっての視点などを一言お願いします。審査委員長から……。

能作:金属工芸品の製造販売をしています能作です。会社では自らデザイン開発にも取り組んでいます。審査にあたってはクラフトの原点に立ち返ると、公平に審査するをポイントに、今日の2次審査に臨みたいと思っています。

:金沢を拠点にガラス作家として活動しながら、現代作家のギャラリーも営んでいます。この2つの視点とともに、作品を見ていきたいと思っています。

永山:建築設計の事務所をやっています永山です。この会場に入って、作品がたくさん並んでいるのに圧倒されました。技法の特殊性などは私は専門家ではないのでわからないところもありますが、心惹かれるもの、説明抜きでこれいいなと思うもの、を推していきたいと思います。

秋山:株式会社松屋の秋山です。私は20年ほどリビング関連の商品の仕入れに携わってきました。その経験がお役に立てるのではないかと思っています。画像での1次審査とは違い、今日は作品の質感を確認しながら審査できますので、新たな気持ちで臨みたいと思っています。

(……このあと審査員は、各自の“推し”の10作品の選定に入りました。そして約1時間後、各審査員の投票を集計し、1票以上獲得した作品を別に集めました……)

この作者、何かに挑戦しているのでは……

事務局:三田村審査員の票も合わせて、1票以上の投票があった作品は38。最高は4票をとったものが1作品、3票獲得作品はなくて、他は2票、1票でした。

能作:では2票以上を獲得した作品の中から、グランプリ作品、アワード作品を選びましょうか。

(……事務局が1票の作品を別に集める……)

:1票の作品の中でも、他の審査員が気づいていない何か素晴らしい点があるかもしれません。

能作:1票しか取っていないけど、2票の方に押し上げたい作品はありますか?

:私はあのボックス型の引き出し(「Rainbow Structure Cabinet」)を推薦したい。作品自体に原点回帰を感じるとともに、未来を感じさせるものがあります。

秋山:このボックスは、外側はカバーで、中身が容器になっている。それも容器を全て引き出して、上蓋を開けて使用する。

:つくりが少し難しいですね。

秋山:私は最初、引き出してすぐに使えるのかと思ったのですが、引き出した後、上蓋を外すのです。少し不便ですけど、カバーと容器の模様が美しく、この先の展開の可能性があるように思えます。

能作:では2票以上のグループに復活させましょう。他に推したい作品はありますか。

永山:ペーパーコードの椅子(「TRICERATOPS」)はいかがですか。ペーパーコードを使ってこんな造形的な椅子は珍しいのでは……?

能作:先ほど座ってみたのですが、ギシギシする音が気になりました。

永山:(作品に座りながら)確かにこの音は気になりますが、荷重が分散して丈夫にできています。また意外と安定していて、ハンモックのように使えそうです。

秋山:新しさという視点があるように感じますが……。

:私はこの作者が何かに挑戦しているのではないかと思います。

能作:この立体的な編み方も素晴らしい。では、これも復活で!

秋山:私はこの井草の作品(「PIXEL WEAVE ―MONA LISA― ピクセルウェーブ モナリザ」)に興味があります。

能作:確かその作品にはモナ・リザがデザインされて織られている。

秋山:商売の関係で井草や花ゴザ関係の商品をたくさん見ていますし、関係者から井草を盛り上げたいというお話も聞いてきました。この作品は、ピクセルを利用してモナ・リザをデザインしていますが、こういう織り方が現代的ではないかと思いました。

永山:この井草のマットは、モチーフを工夫したら面白い展開が可能ではないですか。

能作:では井草のマットも2票以上のグループに復活しましょう。逆に、現状では2票を獲得しているけど、よくよく見たら、1票のグループとあまり差がないという作品はありますか。

(……ここで審査員により3作品がノミネートから外され、のべ12作品の中からグランプリ1作品、アワード4作品が選ばれることとなった……)

おしゃれですね

能作:だいぶ絞られてきましたね。こうして残った作品を見ると、この2票獲得している練込み作品(「練上ball rainbow・prism」)と他の2票獲得作品を比べると、練込み作品は格段にいい。

永山:この作品、本当に練込みでつくっているのでしたら、すごいですよ。繊細なデザインが綺麗です。

事務局:ネットで検索すると、この作家は練込み作家のようです。

能作:では4票獲得している桶(「blossom」)とこの練込み作品(「練上ball rainbow・prism」)は入賞とし、他3つの入賞作品を投票で選びましょう。

(……投票の結果、ボックス型の引出し(「Rainbow Structure Cabinet」)、ぺーパーコードの椅子(「TRICERATOPS」)、ガラスの器(「水月」)の3作品が選ばれ、桶、練込み作品と合わせた5作品の中からグランプリ、アワードが選ばれることとなった……)

:このガラスの器(「水月」)は、金箔、銀箔を施して繊細に仕上げていますね。でも、器をのせている台が気になります。

能作:テーブルクロスの上に直に置いたらどう?

:(器を移して)そうですね。器の見え方が全然違ってきます。

事務局:受賞候補作品として5つに絞られてきました。この中からグランプリを選んでいただき、残りの4作品がアワードとなります。

能作:ボックス型の引出し(「Rainbow Structure Cabinet」)とペーパーコードの椅子(「TRICERATOPS」)は、審査員の推しによって、いわば敗者復活戦から決勝まで進んできたようなものです。

永山:この桶(「blossom」)、上部は花のふくらみのように丸みを帯びていますね。こういう形は珍しいのですか?

秋山:あまり見たことがないですね。技術的に、つくり方が難しいのかもしれません。

:こういう桶は、今の時代どのように利用するのですか?

秋山:氷を入れて、ワインやシャンパンのボトルを冷やす、あるいはお菓子を入れてお茶を楽しむとか……。

:おしゃれですね。

価格設定も重要

秋山:グランプリは技術力の高さで選ぶのですか?

能作:基本的には、クラフトという視点です。この5点にはいずれもその要素があります。ただ価格設定も重要です。その意味でいうと、ボックス型の引き出しは、99万円という値段ですから少し疑問です。逆に、私はこの練込みが1個33,000円の価格にできるのが不思議です。

秋山:それにしても、この練込みの球体の色にひかれますね。少し色合いが異なる2個あるところがいい。

事務局:お話をうかがっていると、グランプリは桶、練込み、ペーパーコードの椅子の3点に絞られてきているようです。ちなみに三田村審査員はこの中の桶をアワードに推薦され、「下部にのみ金属のタガをはめて完結している姿が見事である。上部は8枚の花弁が柔らかな膨らみを持って、輪花の造形となる。杉の柾目の木目は優しく、何を入れても映える造形である」と評されています。
では最後は、挙手で決めましょうか。……桶をグランプリに推される方は……。

(桶に1人、練込みに2人、ペーパーコードの椅子に1人の手が挙がった)

能作:最終的な審査の結果、練込みの球(「練上ball rainbow・prism」)を2025年度のグランプリ、他の4作品をアワードと決定します。

各年の審査レポート